2011年12月4日日曜日

2011「横浜水彩スケッチとオールドレンズ」展

1週間にわたった展覧会が無事終了した。たくさんの方々にご来場いただき、感謝いたします。

展覧会中に描いたもの (モレスキン水彩ノート)

展覧会場 1F(2Fもある)

展覧会場 「横浜水彩スケッチとオールドレンズ」



モレスキン水彩ノートは、見開きで描ける。片面だけのつもりが、描いている途中で、もう一方のページにまで描き足してしまうこともしばしばだ。そのため、ついつい紙の両面に描いてしまうことになる。
絵を発表(額装)するためには、両面に書くことはタブーなのだが(会期中何度も注意されました)、あのノートをバラバラにしてしまうのも、もったいない。

水彩ノートの原画はテーブルの上に置いておくこととして、写真のコピーを組み合わせて展示することにした。

ブログに載せる場合は、画面の幅に制限があるので、どうしても、見開きの絵は小さくなってしまう。そうすると原画の迫力が無くなってしまうのだ。やはり絵はそのままの大きさで見たい。
名画も実際の大きさが、画集で見ていた印象と異なることも多い。そうすると、絵の印象そのものも変わってくるものだ。

印画紙のL2判に出力すると、ほぼ原画の大きさとなる。原画と同じように、見開きの絵は倍の大きさでレイアウトできる。
それに合うような、写真用の額が5枚あった。全部使うつもりでレイアウトしてみると余ってしまうので、写真も組み合わせてみることにした。同じ印画紙に出力しているので、写真との親和性も良い。そこまで計算していなかったのだが、絵と写真の組み合わせもなかなか良いものだ。「水彩スケッチとオールドレンズ」展にふさわしい。

ただし、原画も無いと物足りないので、テーブルの上に置いて見ていただくことにした。やはり、写真はしょせん写真。原画の良さには負ける(と思う、いや思いたい)。

「横浜水彩スケッチとオールドレンズ」パネルI

「横浜水彩スケッチとオールドレンズ」パネルII

「横浜水彩スケッチとオールドレンズ」パネルIII

「横浜水彩スケッチとオールドレンズ」パネルIV

「横浜水彩スケッチとオールドレンズ」パネルV


「オールドレンズ」部門として(?)、組写真も展示した。家のすぐ近くにある「市民の森」で撮ったもの。市民の森は丘の上にあるので、夏の暑さを避けて夕刻に散歩に行くと、ちょうど森の中に水平に日が差し込んでくる。
前にも書いたが、こうした光の粒子を感じさせる写真表現が好きだ。光を表すのに、写真は絵よりずっと表現力がある。

三原色には「光」と「色」の2種類ある。絵で「光」の三原色を表すことは難しい。色を加えることで、黒に近づいていくのだ。反対に、写真は基本的に「光」の三原色を写し取る機械だ。色を加えれば加えるほど白になる(露出オーバーの時など)。

逆説的にいえば、絵(特に水彩スケッチ)は、あまり色を重ねてはいけない。逆に、写真はあまり光を取り入れすぎてはいけない、と思うのだがいかがであろうか。






下の2枚は最新作。F4の大きなスケッチブックにセピア色のインクを下絵に使っている。この大きさだとアートペンでは少々細すぎる。付けペンを使用することにした。カリグラフィー用の太い線が描けるものだ。例によってペンを逆にすると細い線も描ける。
悪くはないが、もう一段階、線の太さのバリエーションが欲しいところだ。付けペンをもう一種類増やしてみようか、と思案中。

横浜開港記念館  F4 (インクに水彩)

横浜銀行協会 F4 (インクに水彩)


これは逆に、もう13年も前のもの。
アメリカに視察旅行をした時に、休日に絵でも描こうかとスケッチブックを持っていった。仕事に就いてからは、そう絵を描くことはなかったのだが、今思い起こせば(そういえば)、この時初めて「水彩スケッチ」を描き始めたのだった。

サンディエゴにて SM(鉛筆に水彩)

ペンシルベニア大学リチャーズ医学研究棟 SM(鉛筆に水彩)


準備に時間が無くて(サボっていて?)、額装している余裕がない。とりあえず、ありったけのスケッチブックと額を持って、画廊に駆けつけた。絵と持ち合わせの額に合うのが、これしかなかったのだ。
そういうわけで、全く意図したわけではないが、今回の展覧会では奇しくも、水彩スケッチの「ことはじめ」と「最新作」が並べて展示されることとなった。
こうしてみると、よく分かる。13年もの間、なーんにも進歩していないことが。

銀座のビルの谷間にあるお稲荷さん

銀座の街角に天使がいるのはご存知?

2011年11月20日日曜日

展覧会開催!と酒場スケッチ

ブログを始めてから初めての展覧会を開催します。
これまでも年1回開催してきたのですが(「井上久美展」に併設)、少しずつ独立することとして、今年は「横浜水彩スケッチとオールドレンズ」展として華々しく(?)開催することにしました。
隣で「井上久美」展もやってます。

2011年 井上智史
「横浜水彩スケッチとオールドレンズ」展
銀座 ギャラリー近江
東京都中央区銀座6-9-16 ロシュビル
地下鉄銀座駅A1出口徒歩3分
交詢ビル東側向かい
2011年11月21日(月)~11月27日(日)
11:00 ~ 19:00(最終日は16:30まで)
11月26日(土)16:30~18:30 には記念パーティを開催します。
ぜひこの機会に、ご高覧賜りますようお願い申し上げます。

(展覧会場のご案内はこちら)
http://www.ginza.info/S62654.html

(井上久美展のご案内はこちら)
http://gallery-you.blogspot.com/p/20111127_16.html



モレスキン水彩スケッチノートを持ち歩くようになってから、酒場で描く機会が多くなった。もともと屋外でもワインなどで口を湿らせながら描いていたのだが、お酒が入ると条件反射的にスケッチブックを取り出すようになってしまった(ウソ)。
横に広がるスケッチノートのおかげで、テーブルの上で広げて書くのも邪魔にならない。お店の人や隣のお客さん人にも声を掛けられ話が弾む。飲むほどにペンはなめらかになる、かどうかは分からないが、少なくともよいお店(安くてうまい)ほど良い絵が描けるようだ。
残念なことには、お店の人からまだ一度もこう言われたことはない。
「その絵、譲っていただけますか。お代は結構ですから。」

横浜駅西口「ヒラツカ」(湘南の魚とワイン)

横浜野毛町 「BASIL」(イタリアン)

有楽町 フレンチバール「VAPEUR」

有楽町 「魚○本店」(静岡魚河岸)

2011年11月13日日曜日

鎌倉三河屋と丸七商店街

鎌倉八幡宮に向かう若宮大路沿いにある三河屋は、老舗の酒屋だ。面白い建物がひしめく若宮大路のなかでも、その存在感は群を抜いている。伝統的な商家建築である出し桁造りだ。出し桁とは深い軒を支えるために桁が外に出ている形式をいう。

それに加え、入り口の差し鴨居は、その大きさといい長さといい、本当に立派なこと。これだけのものはちょっと見ないなあ。
白壁の土蔵は冷蔵庫として使用している。




お店の中も見せていただいたが、創業当時からと思われる立派な金庫が奥に鎮座していた。今度は是非中を描かせていただきたいものである。

敷地内には荷物搬送用のトロッコの線路が敷かれている。現在も使用しているとのこと。
オープンカフェにもなる隣のレストランからこの風情ある景色を楽しむことができる。

E.Ludwig Meritar 50/2.9

E.Ludwig Meritar 50/2.9

E.Ludwig Meritar 50/2.9

E.Ludwig Meritar 50/2.9

E.Ludwig Meritar 50/2.9

E.Ludwig Meritar 50/2.9


鎌倉駅東口に降り立つと(地元の人を除いて)大概の人は小町通りや鎌倉八幡宮に向かうため、左手に向かう。
それと反対の右手方向に向かうと、近代的なビルの横に、「三丁目」的雰囲気の路地が顔を見せている。「丸七商店街」。商店街といってもひとつの建物の中のL型の路地に小さいお店が張り付いている。雑貨や花屋、魚屋さんの他に、食べ物やさんも多い。赤提灯がよく似合う路地だ。


E.Ludwig Meritar 50/2.9






E.Ludwig Meritar 50/2.9

入り口をスケッチした後、中の立ち飲みの居酒屋に入った。はじめはお客さんが少なかったので、安心して描き始めたのだが、瞬く間に常連の人でいっぱいになってしまった。



アートペンはコンバーターを使えば、好きな色のインクを使うことができる。今回はセピア色のインクで下絵を描いている。三河屋みたいなレトロな風景にはよく合うだろう。
下の絵は、元町のレストランにてスケッチしたもの。漫画風でなく軽めの感じに仕上がって良い感じ。

2011年10月30日日曜日

横浜トリエンナーレスケッチ


横浜トリエンナーレの始まりは、2001年。
あの時は、インターコンチネンタルホテルの壁面に巨大な昆虫が張り付き、度肝を抜かれた。2005年には、山下公園のコンテナを積み上げたインスタレーションや、オコ・ヨーコの銃弾で蜂の巣になった貨物車(あれは何年だったかな?)も印象的であった。

そのトリエンナーレも今年で4回目(2回目がクアドリエンナーレ(というらしい)になってしまったから1年ずれている)。今回は11月6日までなので、もうほとんど終盤だが、今回の印象は何だろう。ホーキを掃いてるお姉さんたちのイメージ?。横浜美術館が主会場となり、収蔵品も交えて展示されていることもあり、国際的な現代美術の実験場、というよりはもう少し落ち着いた印象に思える。良く言えば熟成してきたのだろうか。お祭りらしさが少し無くなった感じ。

ヨコハマ美術館前の彫刻群  (ENNA München Lithagon 35/3.5)

横浜美術館エントランスホール (ENNA München Lithagon 35/3.5)








日本郵船倉庫(バンカートスタジオ)みたいなところのほうが、トリエンナーレにふさわしい気がする。内部空間も魅力的だし、なによりアルコールがあるカフェがあるのが嬉しい。
ここは、横浜近代建築の代表である日本郵船横浜支店(歴史博物館を併設)に隣接する倉庫をそのままアートの場としたところ。倉庫独特のマッシュルーム構造の柱が非常に魅力的な空間を生み出している。外に出ると、運河を挟んで赤レンガ倉庫は目と鼻の先だ。

日本郵船海岸通倉庫 (ENNA München Lithagon 35/3.5)

(ENNA München Lithagon 35/3.5)

これはアート? それとも? (ENNA München Lithagon 35/3.5)

郵船倉庫会場で一番感心したのがこの作品。ビデオテープを張っただけのものだが、見る角度によって突然テープが消える。目の前で何のトリックもなく消えるのはすごい体験。リトアニア出身の作家 KEMPINAS の作品。
 (ENNA München Lithagon 35/3.5)

上の作品を横から見たところ。 正面に回るとテープが本当に跡形もなく消える。(ENNA München Lithagon 35/3.5)

倉庫の天窓。作品ではありません。 (ENNA München Lithagon 35/3.5)

対岸の赤レンガ倉庫を望む。(ペン、モレスキン水彩ソートブック)



ヨコハマ創造都市センターは、旧第一銀行横浜支店を改装したもの。以前バンカートスタジオはここに置かれていた。バンカートとは、バンク・アートであり、横浜の歴史的建造物をアートに活用するという試み。当初は銀行の建物が中心だったのでこう呼ばれている。

ヨコハマ創造都市センター内部。ピーター・コフィンのインスタレーションがある。(ペン、モレスキン水彩ノートブック)



新港ピアは前回トリエンナーレの会場の一つ。
港の倉庫をそのまま会場にしたように見えるが、実はトリエンナーレの時に新築したもの(そう見えない所がすごい?)。今回は新・港村としてトリエンナーレの期間に合わせ、様々なイベントが行われている。
靴屋さんや床屋さんもあり、ひとつの仮想的な街のよう。まあ、大規模な学園祭的な雰囲気と言ったら失礼か。
ここで、結婚式も行われていた。

新・港村 (ENNA München Lithagon 35/3.5)

新・港村 (ENNA München Lithagon 35/3.5)

自動ドローイング販売機  500円。中で描いています。

取り出し口から出てきたのが、これ。勢い余って破れちゃってます。 あー500円が…。

新・港村。建築家によるインスタレーション。(ペン、水彩ノートブック)

新・港村から横浜港を望む。描いている途中から夕日になり始めた。(鉛筆、モレスキン水彩ノートブック)





久しぶりに、黄金町も訪ねた。ここもトリエンナーレ期間に合わせ、「黄金町バザール」として、たくさんのイベントが行われている。
その導入空間的役割を果たしているのが、「竜宮美術旅館」。ここは、(黄金町らしく)元進駐軍相手の旅館だったらしい。そこかしこに見られる、すこし大げさな日本趣味とアールデコ(?)風の意匠の融合はそのせいかも。本来のアート作品であるインスタレーションより、そちらのほうがよほど面白い。
残念ながらもうあと1年くらいで取り壊されてしまうようだ。表でスケッチをしていたら、見回りの警官(?)さんが教えてくれた。


無料連絡バスの車窓から  (ENNA München Lithagon 35/3.5)


竜宮美術旅館 (ペン、モレスキン水彩ノートブック)

洗面室の鏝絵 (ENNA München Lithagon 35/3.5)

浴室。浴槽の中はインスタレーション (ENNA München Lithagon 35/3.5)
あちこちに池のモチーフが。(ENNA München Lithagon 35/3.5)




竜宮美術旅館 (ENNA München Lithagon 35/3.5)

夜の竜宮美術旅館 (ENNA München Lithagon 35/3.5)